作品概要
基本情報
- アーティスト
- Faust
- 発売
- 1973
- オリジナル収録構成
- 無題のLP両面
- 素材の録音期間
- Wümme、1971年6月~1973年6月
- レーベル
- Virgin VC 501
- プロデューサー
- Uwe Nettelbeck
重要である理由
編集によってアーカイヴが新しいアルバムになる
『The Faust Tapes』は約2年にわたる録音を、編集によってのみ曲順が成立するアルバムへ変えます。練習、未完成の歌、内輪の冗談、器楽的試作、話し声、リハーサルの衝撃、テープ実験は、解説付きのアーカイヴ残片として提示されません。Uwe Nettelbeckはそれらを連続する2面へ切りつなぎ、ピアノ前の数秒を、完全に形を得た歌や暴力的なアンサンブル箇所と衝突させます。
オリジナルLPはどちらの面にも内部題名を与えないため、聴き手は印刷された地図なしに認識と喪失へ出会います。Virginが本作を49ペンスで売ると決めたことで、異例に難解な音楽が英国の何万もの家庭へ入り、宣伝と受容は切り離せなくなりました。
廉価であっても内容が容易になったわけではありません。価格という障壁だけを除き、Faustで最も凝縮されたモンタージュをそのまま保ちました。
後年の版は流れを題名付きの26区間へ分け、移動には便利ですが、無名性を持つ1973年の物体とは歴史的に異なります。本作は作曲であると同時に流通上の事件として重要です。急進的なスタジオ実践が、代表曲へ単純化されないまま大衆へ届きました。
Virgin、1973年
Faust、49ペンスでVirginへ入る
Faustの最初のPolydor作品2枚は、住み込み型のWümmeスタジオで、プロデューサーUwe NettelbeckとエンジニアKurt Graupnerのもと制作されました。第2作が認識しやすいリズムと歌の形を増やしても、レーベルの商業的期待は満たされませんでした。Faustが若いVirginレーベルへ移ると、初期セッション以来Wümmeに蓄積された録音が入門作の素材になりました。Nettelbeckは1971年6月から1973年6月まで録音されたアウトテイク、スケッチ、練習、より完成した演奏から、密度の高いマスターを組み立てました。
Virginは1973年に品番VC 501で発売し、LP価格をシングル1枚とほぼ同じ49ペンスに設定しました。宣伝はFaustを、ドイツ実験音楽へ高まる英国の関心と結びつけ、馴染みのないフルプライス盤に伴う通常の金銭的リスクを避けました。オリジナル盤は片面につき無題のプログラム一つで、約22分と21分です。1973年後半には新録のVirginスタジオ作『Faust IV』が続き、『The Faust Tapes』は通常の第4セッションではなく、WümmeからThe Manorへの橋となりました。
Wümmeの声
編成の変化を越えて保存されたWümme共同体
編集盤は十分に長い期間をまたぎ、デビュー時の6人編成と後の5人組の両方を保存します。Meifertのドラムは初期素材に現れますが、その参加を全箇所や『Faust IV』編成へ一般化してはいけません。Diermaierの打楽器は孤立した練習から共同体的な推進まで広がり、編集は数秒の打撃を長いグルーヴと同じだけ重要にします。Irmlerのオルガンはドローン、傷ついた和音、突然の抒情的基礎として現れ、モンタージュに文脈を取り去られます。
PéronとSosnaは最も識別しやすい歌声を担い、とりわけ反復句が切断を生き延び、個性を確立できる長さで残る時に際立ちます。Wüsthoffのサクソフォンと電子音は、いくつもの短い集団練習を鮮烈に彩られた出来事へ広げます。Nettelbeckの編集上の作者性が中心です。選択、順序、衝突が、当初一枚のアルバムとして設計されなかった素材から発売作品を作ります。Graupnerの録音は、2年間の仕事を一様なスタジオ音へ無理にそろえず、音質と距離の差を保ちます。
テープ・モンタージュ
プリペアド・ピアノ、傷ついた歌、瞬間的な尺度
プリペアド・ピアノ、または複数人で弾くピアノが共同の身体活動として始まり、技巧的な鍵盤演奏が盤を組織するという考えを即座に否定します。声、ドラム、サクソフォンは数秒だけ現れ、アンサンブル全体の関係を確立し、展開前に消えます。「Flashback Caruso」と「J'ai Mal aux Dents」は比較的持続する歌の個性を示しますが、反復と周囲の編集が通常のシングルになることを防ぎます。テープ・エコー、速度変化、機械音、突然の沈黙が、部屋の大きさに対する聴き手の感覚を繰り返し変えます。
ドラム箇所がコラージュを身体的にし、ごく短い話し声は意味が安定する前に言葉を質感へ変えます。B面には壊れやすいフォーク風素材、さらに続くサクソフォンと打楽器の出来事、電子音の波、より完成した声楽曲があります。三曲の大構造で接合部を隠す必要がないため、移行はデビュー作より激しいこともあります。それでも本作には歩調があります。密集部は静かで旋律的な区間と釣り合い、反復素材が無関係に見える断片を越えて記憶を作ります。
面別ガイド
連続する2面と後年の26の目印
Untitled — Side One
A面は複数の手によるピアノで始まり、ほとんど即座に声、ドラム、サクソフォンを通って、後に「Flashback Caruso」と索引化された憂鬱な焦点へ移ります。練習とスタジオ会話が通常の曲順への期待を中断します。「J'ai Mal aux Dents」は面内最大の反復する歌の物体となり、繰り返されるフランス語句は周囲でバンドが厚みを増すほど執拗になります。初期のツイン・ドラム素材、「Dr. Schwitters」と結びつく断片、短い器楽的衝撃が続きます。現代の索引は13の目印を与えますが、オリジナルA面は認識、中断、帰還を設計した一つの行為として働きます。
Untitled — Side Two
B面は物語をリセットせず再開します。ドラムと重なるサクソフォンが短い断片、跳ね返るピアノ、警告へ導きますが、当初の無名性により、それがリハーサル、作品、内輪のやり取りのどれかは定まりません。後半では「Stretch Out Time」「Der Baum」「Chère Chambre」などの声楽素材がより長く残り、面の感情曲線は次第に歌の形を帯びます。その動きはテープ音と部屋鳴りに繰り返し乱されます。終盤はアーカイヴの年代順を明かさず、蓄積されたWümmeの時間を事後に作られた結末へ変えます。
アーカイヴの時間
年代順のない記憶
『The Faust Tapes』に統一された物語はありませんが、編集は年代順のない記憶という強い主題を作ります。旋律句は、聴き手が最初の文脈を忘れた後に戻り、形式的再現より回想に似て響くことがあります。練習は完成したように聞こえる歌の隣へ置かれ、一方を本番、他方を準備と宣言する階層がありません。多言語の声は個人的・社会的な存在感を保ちながら、単独の説明者へ収束することを拒みます。
アーカイヴは労働を繰り返し露出します。ピアノ上の手、サクソフォンの息、カウント、失敗した入り、部屋の音が聴こえたままです。喜劇と暴力は共存し、どちらも特別なアウトテイク分類へ分離されません。後年の26題は出来事の識別に役立つ一方、流れを当初の体験以上に分類学的に見せます。最も深い概念は編集上の平等です。録音されたどの瞬間も、適切な隣の瞬間と並べれば構造を決定できます。
Virgin VC 501
廉価な方向喪失のためのオプアート
Virginのオリジナル・スリーヴは白黒のオプアート模様を用い、反復する幾何学は見続けると動いたり歪んだりするように見えます。Wümmeスタジオを再現せず、奏者を特定せず、音源も説明しません。像は高速モンタージュに相当する視覚を与えます。安定した印刷単位が不安定な知覚全体を作るのです。最小限の題字は、買い手が通常の歌集ではなく一つの物体を手に入れた感覚を保ちます。
Nettelbeckは制作だけでなくカバー構想とも結びつきます。小売価格が低いため、装丁の視覚的な直接性が重要でした。馴染みある内容を約束せず、好奇心を引けたからです。後のRecommended Records再発は見せ方を変え、一部CD版は異なるカバーを使いました。復元されたBureau B版はオリジナルのプログラムと視覚的個性へ戻りつつ、移動用の現代的な内部題名を追加します。
49ペンス
英国約6万世帯がFaustに出会う
Virginは1973年、英国市場へFaustを紹介する一環として『The Faust Tapes』を49ペンスで発売しました。Bureau Bの公認史は約6万枚が英国の家庭へ入ったと記録します。意図的な低価格は通常のフルプライス盤との商業比較を成り立たなくし、裏づけのないチャート物語を特に誤解を招くものにします。多くの購入者が、廉価から想像され得る試聴盤や親しみやすい曲集ではなく、43分のコラージュへ出会いました。
それでも宣伝はFaustにとって当時最大の英国での露出を生み、長く続くカルト的聴衆を与えました。曲順が異質な素材を一貫した美的体験へ変えるため、批評は本作を単なる宣伝上の悪ふざけ以上として扱ってきました。作品の到達範囲を、資料にある概数を超える正確な初動売上へ変換してはいけません。続く『Faust IV』は、新しい聴衆がフルプライスの新録盤にもついてくるかを試しました。
コラージュ・レコード
持ち運べるWümmeアーカイヴの傑作
『The Faust Tapes』は実験的ロックを代表するテープ・コラージュ作品の一つになりました。後に索引化された26断片は、物理的なテープ構築物のまま、サンプリング、プレイリスト、非線形デジタル移動と結びつく聴取習慣を先取りします。ノイズ音楽家、ポストパンク・グループ、スタジオ実験家は、未完成素材を作曲にする前に清掃する必要はないと聴き取れました。本作は抒情的・共同体的な美しさも保ち、コラージュが摩擦音だけを意味することを防ぎます。
廉価販売の歴史は伝説と切り離せませんが、流通が説明するのはアクセスであり芸術的価値ではありません。後のWümmeアーカイヴ作品は一部の音へより完全な文脈を与え、Nettelbeckがどれほど急進的に作り替えたかも確認させます。2022年Bureau B版は26区間を名づけ、オリジナルの両面形式を書き換えず詳細な比較を可能にします。アーカイヴを中立でも完全でもあるかのように装わず、私的な作業時間を公にするからこそ、本作は生き続けます。
索引化の歴史
当初の無名性と後年の索引化
オリジナル・アルバムは無題の2面であり、1973年に個別印刷された26曲ではありません。後年の索引は便利ですが、回顧的なものと明記する必要があります。素材録音はWümmeでの1971年6月から1973年6月に及びます。初期6人編成と後の5人編成の両方が現れ得ます。
Nettelbeckが編集・制作し、Graupnerが素材録音を担当しました。歌と話し声が広範囲にあるためInstrumental分類は誤りです。Recommended CDの索引とBureau Bの題名は、すべての表記が同一ではありません。配信で個別の目印が見えても面の区切りを保ってください。
聴き進め方
コラージュを飼い慣らさずに進む
- まず後年の題名を読まず、LPの各面を連続して聴く。
- 短い練習が配置によって重みを得る場所に気づく。
- A面では「Flashback Caruso」と「J'ai Mal aux Dents」を記憶の錨にする。
- 面を返す時、ドラムとサクソフォンが物理的尺度をリセットする様子を聴く。
- B面後半に現れる長い声楽の形を追う。
- 再聴時はBureau Bの26題を使い、正確な箇所を探す。
- Nettelbeckが発売した曲順を身につけてから、アーカイヴ素材と比較する。
調査資料
出典と参考資料
- 『The Faust Tapes』公認再発史と26部プログラム — Bureau B
- 『The Faust Tapes』Klangbad公式リリース記録 — Klangbad
- 『The Faust Tapes』録音期間とアルバム分析 — AllMusic
- Faustのバンド史とVirgin年表 — Faust
- 『The Faust Tapes』公認デジタル・プログラム — Bureau B / Apple Music