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クラシック・アルバムガイド

Phaedra

Tangerine Dream · 1974年 · クラウトロック/ベルリン・スクール電子音楽

Virginから1974年2月に発売された『Phaedra』は、Tangerine Dreamの全4曲からなる第5作。Edgar Froese、Christopher Franke、Peter Baumannが1973年11月にManorで録音した、Virgin移籍後初の声明であり、後にベルリン・スクールと結びつくシーケンサー主導の語法を切り開いた出世作である。

1974年2月発売全4曲の第5作Virgin V 2010
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作品

基本情報

アーティスト
Tangerine Dream
発売
1974年2月
アルバム
スタジオ第5作
原盤曲数
4曲
レーベル
Virgin V 2010
音楽
Froese、Franke、Baumann

重要な理由

Tangerine Dreamの規模を変えた不安定なシーケンス

『Phaedra』はTangerine Dreamに新たな形式的中心を与えた。反復する電子音のシーケンスが長編をまとめながら、その周囲のすべての音を安定した拍へ固定せずにいられるようになったのである。表題曲のMoogパターンは楽器が温まるにつれて音程を変え、技術的な不安定さを原盤から隠すべき誤りではなく、耳に聞こえる展開へ変える。Edgar Froese、Christopher Franke、Peter Baumannは、その動く土台の周囲にMellotron、シンセサイザー、オルガン、エレクトリック・ピアノ、ベース、フルートを重ねる。

B面は、突破口となった手法の反復を拒む。「Mysterious Semblance at the Strand of Nightmares」はMellotronの塊を宙づりにし、「Movements of a Visionary」は脈動と質感を通って進み、「Sequent C」はBaumannの無伴奏フルートで終わる。

本作はTangerine DreamにとってVirginからの初リリースであり、ドイツの器楽電子音楽グループを英国Top 20へ送り込んだ。4曲が示すのは、完全に決められたプログラムの整然たる実行ではなく、変化する条件下での演奏としての電子音楽作曲である。後続の音楽家は長編シーケンサー音楽のモデルを聴き取ったが、『Phaedra』の重要性は機械的反復と、手で形づくられ漂う音との緊張にもある。最も有名な革新がなお脆いからこそ重要なのだ。そのシーケンスは、自らずれ落ちそうになるためにこそ耳を引きつける。

The Manor、1973年

ベルリンの電子音楽がVirginのManorへ入る

Tangerine DreamはVirginとの契約前に、ドイツのOhrレーベルから『Electronic Meditation』『Alpha Centauri』『Zeit』『Atem』を発表していた。Edgar Froese、Christopher Franke、Peter Baumannの編成は、すでに長く主に器楽的な形式を発展させていたが、初期作では質感、オルガンの塊、即興的な空間を重視していた。Virginは3人に、オックスフォードシャー州Shipton-on-Cherwellにある居住型スタジオManorを使わせた。公式バンド史はセッションを1973年11月とし、慣れない、または不安定な機材をめぐる厳しい技術的状況を記している。

表題曲には、録音中に調律がずれたMoogのシーケンスが使われ、その周囲をフルート、Mellotron、ベースのシーケンス素材、ホワイトノイズが取り巻く。原盤4曲の作曲者は3人のいずれかだが、曲ごとの作者は一様ではない。「Mysterious Semblance」はFroese、「Sequent C」はBaumannの作品である。Virginは1974年2月、V 2010として発売し、一般にTangerine DreamのVirgin期と呼ばれる時代が始まった。英国チャートには4月に入り、Top 100へ15週在位。歌も短いポップ・シングルもない作品としては異例の結果だった。

Froese–Franke–Baumann

異なる電子的役割を担う3人の作曲家

Edgar FroeseMellotron、VCS 3シンセサイザー、ギター、ベース、オルガン/作曲、制作
Christopher FrankeMoogシンセサイザー/シーケンサー、Synthi A、鍵盤/作曲
Peter Baumannオルガン、エレクトリック・ピアノ、Synthi A、フルート/作曲
Tangerine Dream演奏、電子的なスタジオ構築
Virgin RecordsVirgin初作とManorスタジオの背景
Edgar Froese原盤ジャケット絵

Frankeのシーケンサーは表題曲に新しいリズムの中心を与えるが、音程が漂うため、機械的な精密さに見えるものも物理的な条件に左右され続ける。Froeseは、とりわけ「Mysterious Semblance」でMellotronをオーケストラの模倣ではなく動く天候として用い、音色のうねりだけでほぼ全体の構造を作る。ギターとベースは聞き分けにくい箇所でも重要だ。本作はシンセサイザーだけの演奏ではない。Baumannのオルガンとエレクトリック・ピアノは、合奏曲の中に持続音と打楽器的な鍵盤色を加える。

最後の「Sequent C」は彼のフルートだけを切り離し、最も密な電子音の重なりの後に息、運指、部屋の響きをさらけ出す。3人は「Phaedra」と「Movements of a Visionary」を共同名義とし、後年のソロ作をグループ名で出したのではなく、合奏による作曲だったことを示す。「Mysterious Semblance」と「Sequent C」は共同制作のアルバム内に個人作を残しながら、その雰囲気から離れて聞こえない。楽器一覧から制作時の音色群は分かるが、聞こえる電子音の一層一層を特定の機材や奏者へ割り当てる根拠にはならない。

脈動と大気

漂うシーケンサー、Mellotronの雲、アコースティックな呼吸

『Phaedra』は、浮遊するノイズと低い電子音の色彩で始まる。やがて反復パターンが現れ、ゆっくりと曲の不安定な時計になる。シーケンスがずれるなか、Mellotronの和音、フィルターのスウィープ、高音域の動きが、揺らぐ中心の周囲で即興されたような規模の変化を生む。表題曲は最後に脈動を手放し、それを組織した機械より長く周囲の音場を残す。「Mysterious Semblance at the Strand of Nightmares」は、規則的な拍を用いず、Mellotronの波、広いステレオ移動、増していく密度で進む。

「Movements of a Visionary」は静かな脈動、声に似た電子的質感、積み重なる鍵盤層を通じて成長し、儀式的な反復と空間的な曖昧さを釣り合わせる。「Sequent C」はスタジオで作られた厚みをほぼすべて取り払い、短いフルートの線だけをむき出しの空気に残す。A面はひとつの長い展開、B面は連続性に対する3つの異なる関係、すなわち、うねり、脈動、呼吸を示す。本作の暗さは短調の旋律より、不安定な調律、遅い登場、距離を測りにくい音から生まれる。

全曲ガイド

PhaedraからSequent Cへ進む4曲

01

Phaedra

A面全体を占める曲は拍なしで始まり、やがてMoogのシーケンスが現れ、楽器の調律が漂うにつれて音程を変える。3人は不安定さを直さず、その周囲にMellotron、電子ノイズ、ベースの動き、フルートを築く。新しい層が加わるたび、同じ脈動の奥行きが変わって聞こえる。題名はギリシャ神話を示すが、音楽がPhaedraの物語を語るわけではない。引力、加速、溶解からなる心理的環境を組み立てる。

02

Mysterious Semblance at the Strand of Nightmares

Froeseの曲は、表題曲のシーケンサーを巨大なMellotronのうねりへ置き換える。和音は、動く蒸気越しに風景を見るように上昇し、重なり、退いていく。華美な題名は夢の像を与えるが、固定された筋書きはない。B面冒頭という位置が重要だ。聴き手は再び脈動を予想し、代わりに持続する幻影を受け取る。本作の個性をひとつの機械技法へ還元できないことが分かる。

03

Movements of a Visionary

柔らかなリズム像、加工された声のような音、重なる鍵盤が、徐々に儀式的な空間を作る。旋律より、質感の登場、後退、変容によって展開する曲であり、3人の共同名義はその集団的な動きにふさわしい。FroeseのMellotron習作とBaumannのフルート小品の間で、個々の音の出所を意図的に分かりにくくしたまま、合奏の運動を再構築する。

04

Sequent C

Baumannの短いフルート独奏が、シンセサイザーの頂点を作らずにアルバムを閉じる。35分に及ぶ電子的な奥行きの後では、息の音と間が相対的に大きくなる。題名にはシーケンスという言葉が残るが、ここでの連なりは、部屋の空気の中で一本の人間的な線がほどけていくことで作られる。結末は技術を拒まず、ひとつのアコースティックな音源を露出させる。その脆さによって、それ以前の音楽もどれほど触れ方と時間感覚に依存していたかが明らかになる。

夢の題名

固定された物語を持たない神話的な題名

『Phaedra』が直線的なコンセプト・アルバムだったという記録はなく、神話的、幻想的な題名を場面ごとの筋書きへ変えるべきではない。表題はギリシャ神話の悲劇的人物を指し、音楽上の登場人物を指定せずに感情的、歴史的な響きを与える。「Mysterious Semblance at the Strand of Nightmares」は、見せかけ、場所、夢をひとつの句で結び、不安定な視覚連想を促す。「Movements of a Visionary」は幻そのものを示すのではなく、知覚を過程として扱う。

「Sequent C」は技術用語のように聞こえるが、最も明白に人間的な呼吸でアルバムを終える。全編を通じ、技術は従順な機械らしからぬ振る舞いを繰り返す。調律は動き、雲は積もり、脈動は消えうる。本作の暗黙の主題は、不確かさの中での制御だ。3人の奏者は、振る舞いの一部を予測できないままシステムを形づくる。この関係が、『Phaedra』を、完全に反復可能なデジタル時間を既定とする後年の電子音楽から隔てている。

Virgin V 2010

Edgar Froeseによる有機体と機械の絵

Edgar FroeseがVirgin V 2010の原盤ジャケット絵を制作した。そこでは有機的、細胞的、機械的な暗示が組み合わされるが、神話上のPhaedraを文字どおり描いた肖像ではない。細い線、暗い地、中央の円形が、音楽におけるシステム、成長、曖昧さの混合と響き合う。バンド名と題名はポップスターのロゴとして前面に出ず、絵の領域に従属する。

A面には「Phaedra」だけが記され、B面は規模が急速に短くなる3曲へ明確に分かれる。Virginの見開き装丁は、抽象的な視覚的個性をありふれたバンド写真へ変えることなく、3人を国際的な聴衆へ紹介した。後年のボックス・セットは、アウトテイク、ライヴ録音、新ミックスを加えながらこの像を再現、再解釈する。それらの拡張版はセッションを明らかにするが、1974年作を最も明瞭に表すのは原盤の装丁と4曲という境界である。

1974年2月

口コミによる英国での躍進

Virginは1974年2月、『Phaedra』を同レーベル初のTangerine Dream作品として発売した。英国Official Albums Chartには4月20日に登場し、最高15位、Top 100に15週在位した。一般的なラジオ向けの歌ものシングルではなく、主に口コミによって売上を伸ばした。その結果、3人ははるかに大きな国際的聴衆を獲得し、英国が重要な市場になった。

当時の評者は、歌手もロックのリズム隊も、なじみ深い管弦楽的標題もない作品と向き合う必要があった。表題曲が中心的な参照点となった一方、B面の曲はシーケンサー以前からあった、宙づりの音とアコースティック/電子音の対照への関心を残した。Tangerine Dreamは新たな知名度をコンサートへ持ち込み、そこでスタジオ曲を一音ずつそのまま再現することはなかった。2019年の『In Search of Hades』は第一世代マスターへ戻り、セッション・アウトテイクを正規アルバムへ挿入せず、その隣に置いた。

ベルリン・スクール

シーケンサー電子音楽の礎

『Phaedra』は、後にベルリン・スクールと呼ばれるシーケンサー主導の様式が現れた作品として広く認識されている。影響の核心は具体的な形式上の解決にある。反復する電子音が長期的な運動を支えながら、その周囲で音色、和声、音程は流動的でいられる。本作はまた、奏者がテープを止めず、耳を傾けて応じれば、見かけ上の機械の誤りも作曲になりうると示す。Mellotronを厚く使った部分は後のアンビエントや映画的な電子音楽へ影響したが、本作はアンビエントが確立した市場区分になる前の作品である。

3人の商業的成功は、Virginが長編器楽電子音楽の聴衆を育てる助けになった。翌年の『Rubycon』は連続するシーケンサー手法を洗練し、さらに後のTangerine Dream作品は、より固定された旋律主題と映画音楽を導入した。現代のリミックスや記念公演は本作の適応力を裏づけるが、原機材の正確な不安定さまでは再現できない。長く惹きつけるのは、反復と漂いの交渉が耳に聞こえるからだ。システムが始まり、自らの条件を変え、最後には蒸発する。

オリジナル構成

1974年原盤の4曲という境界を守る

1974年オリジナルLPVirgin V 2010:『Phaedra』がA面全体、3曲がB面を占める。
曲名表記の違い原資料では通常「Movements of a Visionary」だが、後年の公式曲目には「Moments」と記すものもある。
拡張アーカイヴアウトテイクとSteven Wilsonのミックスは後年の補遺であり、原盤に追加された曲ではない。

正規のアルバムは4曲。「Phaedra」がA面全体を占め、「Mysterious Semblance at the Strand of Nightmares」がB面を始める。原盤第3曲は、後年の曲名表記の違いにも触れつつ、ここでは「Movements of a Visionary」とする。

「Sequent C」はBaumannによる短いフルートの結末。原盤に歌はなく、「器楽」という分類が適切である。アウトテイク、同時期のコンサート、Steven Wilsonのリミックスは拡張アーカイヴ版に属する。マスタリングの違いで微細な音の聞こえ方は変わりうるが、4部構成は変わらない。

聴き方の道筋

面全体の不安定さから孤独なフルートへ

  1. 冒頭を空虚な雰囲気とみなさず、表題曲のシーケンスが現れるまで待つ。
  2. ヴァースの区切りを探さず、音程の漂いと層の変化を追う。
  3. 面替わりでは、規則的な脈動が直ちに消えることに注目。
  4. 「Mysterious Semblance」のMellotronを、単なる模擬オーケストラではなく、動く塊として聴く。
  5. 「Movements of a Visionary」が段階的な登場によってリズムを再構築するのを聴く。
  6. 最後は「Sequent C」の生々しい息と間に耳を澄ます。
  7. 再聴時には、アウトテイクを発売版と混同せずに比較する。

調査資料

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