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クラシック・アルバムガイド

Tracks and Traces

Harmonia 76/Harmonia & Eno '76 · 1997年 · クラウトロック/電子音楽/アンビエント

1976年9月にHarmonia Studioで録音され、1997年にHarmonia 76名義で初めて発売された『Tracks & Traces』は、Brian Eno、Michael Rother、Dieter Moebius、Hans-Joachim Roedeliusによる9曲の共作を収める。

1976年9月録音1997年発売オリジナル9曲版
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作品情報

概要

原盤名義
Harmonia 76
参加者
Eno, Rother, Moebius, Roedelius
原盤収録曲
9曲
2009年版
全12曲
セッション期間
11日間
歌唱曲
Luneburg Heath

重要な理由

伝説的な訪問が21年後にアルバムとなる

『Tracks & Traces』は、Harmoniaの3人全員とBrian Enoがスタジオで長期間向き合った唯一の記録である。録音時にはHarmoniaの1970年代半ばの活動期がほぼ終わっていたため、公式解散前でありながら、実質的にはRother、Moebius、Roedeliusの再会セッションだった。4人全員が作曲、演奏、制作に名を連ねており、HarmoniaをEnoがプロデュースした作品ではなく、対等な共同制作の記録である。彼らはForstのスタジオで11日間、ほぼ生演奏で即興し、オーヴァーダビングは最小限にとどめ、後の作業は主にテープの編集と発売可能な状態への整備に集中した。

1997年版の曲順は『Vamos Companeros』で唐突に始まり、1分半ほどの断片2曲で終わる。2009年のGrönland版は、冒頭に『Welcome』と『Atmosphere』、末尾に『Aubade』を加えて全体を組み替えた。『Luneburg Heath』にはEnoの歌と歌詞があるため、ほかの大半が言葉を持たなくても、作品全体を器楽曲とは分類できない。本作はHarmoniaの田園的な電子音楽の方法と、その後のEnoによるClusterとの共同制作を結ぶ一方、音響面でも歴史面でも両者とは異なる独立作である。

Forst、1976年9月

Harmoniaがほぼ離散した後、EnoがForstを訪れる

Enoは1974年にHamburgでHarmoniaの演奏を観て、3人からForstへの招待を受けた。彼が1976年9月に訪れた時点で、Rotherはソロ作を進め、Roedeliusも自身の録音へ向かい、MoebiusはLilientalに参加していた。この滞在は完成アルバムを納品する正式なレーベル案件ではなく、Forstでの暮らしと音楽を中心としたものだった。Eno、Rother、Moebius、RoedeliusはHarmonia Studioで11日間にわたり即興演奏を重ねた。

テープはHarmoniaの当初の活動期間には発売準備がなされなかった。後年Roedeliusは技師と共に4トラック素材の一部を聴ける状態に整え、1997年にドイツのS3、国外のRykodiscから出た9曲入りアルバムを編んだ。当初のHarmonia 76という名義は発売年ではなくセッション年を示す。2009年のGrönland再発では、Rotherが自身に残ったテープから3曲を選び、Harmonia & Eno '76名義の新たな12曲構成へ組み込んだ。

HarmoniaとEno

作曲、演奏、制作を共有する4人の即興演奏家

Brian Eno楽器、『Luneburg Heath』の歌唱・作詞、作曲、制作
Michael Rotherギターとスタジオ楽器、作曲、制作
Hans-Joachim Roedelius鍵盤とスタジオ楽器、作曲、制作、原盤編集
Dieter Moebiusシンセサイザーとスタジオ楽器、作曲、制作
Eric Spitzer-Marlyn1997年版のオリジナル・マスタリング
Othmar Eichinger1997年版のオリジナル・マスタリング
Tom Meyer2009年版のマスタリング/リマスタリング
Christine Roedelius写真

公式の曲別記録でEnoが声を担当するのは『Luneburg Heath』だけであり、それ以外では器楽奏者として4人の音の網目に加わる。Rotherのギターは通常のリード・ブレイクではなく、長い旋律線や反復する格子として現れることが多い。Roedeliusはローファイな鍵盤パターンと親密なピアノ風の形を持ち込み、最初に発売可能な版を組み立てる中心的役割も担った。Moebiusは持続音の表面へ、破裂音、擦過音、合成信号、予測しにくいリズムを差し込む。

公式再発盤では、4人全員に作曲、演奏、制作の表記がある。セッションは即興で、曲ごとの楽器情報も不完全なため、聞こえる各音の担当を断定すべきではない。マスタリング表記は、9曲版を作った1997年と、Tom Meyerが12曲版を再構成した2009年という二つの編集時点に属する。彼らの別の活動で重要なConny PlankやHolger Czukayに、本作での演奏クレジットはない。

即興セッション

脈動と空気感の間で進むスタジオ生演奏の発見

本作には、テープが回る中で演奏者が形を発見していく感触が残る。リズムは機械の脈動、反復するギターのアタック、鍵盤ループとして始まっても、別の層が尺度を変えると主導権を失う。『By the Riverside』は、低く反復する動き、環境音的な細部、旋律の閃きから、ほぼ静止した状態を作る。『Luneburg Heath』では、Enoの警告する歌声を、オルガンの脈動と電子ノイズに置き、通常の歌曲編曲を避ける。

『Sometimes in Autumn』ではRotherのギターが長い軌道を保ち、シンセサイザーの層が膨らみ、衰え、機械音を露出させる。『Weird Dream』はMoebiusを思わせる中断を大きく扱い、クリック、鈍い打音、信号を構造の一部にする。『Almost』は下降するギターとピアノ風の旋律を柔らかな音場へ結び、原盤で最も明瞭な感情的解決を与える。

『Les Demoiselles』は、ユーモアによってそれまでの憂鬱を破る、歪んだ機械時代の舞曲へ移る。続く二つの終曲断片は未完成性を明示し、『When Shade Was Born』と『Trace』はそれぞれの世界が認識できた途端に終わる。最小限の後処理は、粗い接続や音量差を1976年の均質な完成作品に見せかけず、セッション資料の証拠として残す。

原盤9曲

1997年オリジナル9曲の曲順

01

Vamos Companeros

1997年版は準備なしに始まる。機関車を思わせる反復リズムと、さえずる電子音が即座に圧力を生む。Rotherの重ねたギター・アタックが硬い幾何学的な輪郭を加え、シンセサイザーの細部が格子を不安定にする。スペイン語の題名は共に進む運動を示し、4人が違いを均さず一つのパターンへ噛み合う力にふさわしい。2009年版では穏やかな追加曲2曲の後の3曲目へ移り、唐突な入口から最初の大きな加速へ役割が変わった。原盤の冒頭では、発掘されたアルバムがすでに動いているように感じさせる。

02

By the Riverside

『By the Riverside』は、低く反復する音型、かすかな金属音や鳥のような細部、瞬間的な旋律の反射を中心に、曲順の速度を落とす。9分半の長さは劇的事件を要求せず、注意深い聴取に応える。Weser川に近いForstという場所は題名に実際の地理的響きを与えるが、記録された情景を描写した曲ではない。むしろ各層が、安定した観測点の前を漂う。『Vamos Companeros』の後で、硬い脈動から官能的な停滞まで作品の幅を示す。その辛抱強い設計は後のEnoとClusterの協働にも通じるが、どちらか一方だけのものではない。

03

Luneburg Heath

『Luneburg Heath』は、原盤曲目で唯一、確実な記録のある歌唱曲である。Enoは速度を変えたオルガン風の脈動、唸り、口笛、小さな電子的攪乱の上で警告を繰り返す。声は具体的な土地と危険を導入するが、編曲は通常の物語展開を拒む。短いため、歌は広い器楽アーカイヴを通過する通信のように響く。2009年の公式表記では、この曲の歌唱と作詞をEnoが担当する。この限定された事実だけで器楽作品という分類を退けられ、ほかの曲に根拠のない歌唱を投影する必要はない。

04

Sometimes in Autumn

約16分の『Sometimes in Autumn』は、原盤で最も長く途切れない音場である。刻むギター・パターンと長い旋律線がRotherの構造的役割を明瞭にし、シンセサイザーの弦楽的な層、工業的ノイズ、変化する電子音の密度が進路を絶えず変える。秋を示す題名の憂いは、固定した区画へ落ち着かず、花開いては衰える音楽に合う。動きは止まらないが、それ以外はほぼ何も固定されない。この規模によって4人の即興の仕組みが見える。反復が共通の足場を作り、各人はそれを壊さず環境を変えられる。

05

Weird Dream

『Weird Dream』は『Sometimes in Autumn』の明確な道筋から退く。破裂音、クリック、擦過音、鈍い打音、短い電子信号が、原因と応答を見分けにくい不定形の空間へ入る。Moebiusの破壊的な細部への嗜好がとりわけ聞き取りやすいが、共同表記がある以上、音を一つずつ絶対的に帰属させることはできない。夢の論理は語られる夢ではなく、尺度の急変から生じる。原盤曲順の暗い中心を占める6分半が薄れると、『Almost』がより簡潔で温かな素材から旋律を組み直す準備が整う。

06

Almost

『Almost』は、静かな電子音の空気に囲まれた下降ギターとピアノ風の旋律を中心に置く。題名の通り、解決へ何度も近づきながら、完成した歌曲形式には固まらない。Rotherの旋律の明晰さとRoedeliusの親密な鍵盤感覚が特に調和し、EnoとMoebiusは場を開かれたまま少し異質に保つ。『Weird Dream』の形なき信号の後では、慣例に従わずとも感情が直接届く。約5分半の弧は原盤で最も自立した形式の一つだが、最後まで暫定的である。美は訪れ、しばらく保たれ、通り過ぎるに任される。

07

Les Demoiselles

『Les Demoiselles』は、歪んだ、ほとんどバロック的な電子舞曲を通じてユーモアと歴史的様式化を導入する。唐突な接続と意図的に単純なパターンは、伝統を不完全な機械で再構成したように響かせる。フランス語題名の優雅さを、編曲は尊重しながら揺さぶる。4分という長さは、広大な音場の後に引き締まった形を戻す。『Almost』の後に置かれることで、誠実さを否定せず遊びへ変える役割を持つ。舞曲の衝動は、4人が既知の音楽的記憶を即興の素材にできたことも示す。

08

When Shade Was Born

『When Shade Was Born』はわずか1分半だが、その柔らかな音の世界は移行部より、完全な可能性から残った断片のように感じられる。題名は物語を語らず、小品に起源神話を与える。まばらな旋律、減衰、周囲の静けさが、出現そのものを聞かせる。1997年版では『Les Demoiselles』の後、二段階に縮む終結の前半となる。短さを大げさな解釈で覆ってはならない。繊細な状態を演奏者が見つけ、反復で大きな曲へ変わる前に手放したことに価値がある。

09

Trace

『Trace』は原盤を閉じる、もう一つの90秒の垣間見である。題名は1997年の企画を正確に表す。残滓を、十分に展開された歌と偽らず保存する。小さな鍵盤と電子音の身振りが現れ、雰囲気を作り、退く。この終わり方により、9曲版は資料的で意図的に未解決に感じられる。2009年版では『Trace』の後に長く穏やかな『Aubade』が続き、その効果が変わる。原盤位置で聴けば、過去を壮大に飾ることを拒み、1976年の出会いを、続き得た過程の証拠として残す。

曲と痕跡

川、荒野、秋、未完の記憶

『Tracks & Traces』という題名は、完成した1976年作として構想されたのではなく、セッションから編まれたアルバムであることを認める。原盤冒頭の『Vamos Companeros』は仲間と運動を示す。『By the Riverside』と『Luneburg Heath』は、広いドイツの背景につながる風景へ音楽を結びつける。『Sometimes in Autumn』は、季節と変化を中心に置きながら、曲を字義通りの標題音楽にはしない。

『Weird Dream』は内側へ向かい、地理を不安定な知覚に置き換える。『Almost』は未完を感情の状態として名づける。『Les Demoiselles』は文化的記憶と遊戯的な再構成を導入する。『When Shade Was Born』と『Trace』は、断片として生き残ることを原盤終結の明示的な主題にする。

1997年と2009年

Harmonia 76からHarmonia & Eno '76へ

初版は1997年、Harmonia 76名義で発売された。ドイツのS3盤と国外のRykodisc盤は9曲構成だった。題名は、比較的まとまった曲を指すtracksと、短い、あるいは未完成の残滓を指すtracesを併置し、資料の性格を率直に示す。2009年のGrönland版は名義をHarmonia & Eno '76へ変更し、別のアートワークを採用した。

公式再発資料ではChristine Roedeliusに写真の表記がある。Juliane SonntagとJulian Roedeliusは2009年版のアートワークを担当した。この再発は単にボーナス曲を添えたのではない。追加2曲を原盤冒頭より前へ、1曲を原盤終曲の後へ置いた。どちらの装丁と曲順も、同じ1976年9月のセッションに対する正当な編集構成である。

遅れての発売

二つの版が異なる二つのアルバム像を作る

『Tracks & Traces』は録音から21年後の1997年に初発売された。原盤は9曲、約54分。唐突な開始と断片的な終わりは、当時リスナーへ届けられる状態にできたテープをRoedeliusが編んだことを反映する。批評では歴史を明らかにする音楽として認められる一方、セッション由来の粗い形も指摘された。

2009年、Grönlandは約64分の12曲版を発売した。Rotherは自身のテープに残った27の断片から『Welcome』『Atmosphere』『Aubade』を選び、曲順へ組み込む位置を提案した。この改訂は参加者の承認を得て、広く配信される版となった。チャート実績や、1976年に拒絶されたという創作話は不要である。確認できるのは、当時セッションが音楽産業向けの商品として追求されなかったことだ。

4人の交流

つながる4人の作品歴に後から現れた接点

本作は、Harmoniaの当初のスタジオ作品と、Enoが1977年にClusterと行ったセッションの間を時系列上で埋める。Enoが空間的な電子音楽の作り方をドイツの3人へ教えたのではなく、すでに存在する即興環境へ入ったことを示す。同時に、彼の声、低音を重視する感覚、簡潔な持続形式への嗜好も、この交換への聞き取れる追加要素である。『Sometimes in Autumn』『Almost』『By the Riverside』は協働の幅を示す中心例となった。

二つの版は、中心となる録音を変えずとも、資料の曲順が意味を変え得ることを示す。発売の遅れは、田園での短い訪問をHarmoniaをめぐる神話の大きな一章へ変える一因となった。粗さと断片は、磨かれた幻の名盤を装わず、発見の過程を露出するからこそ長所である。『Tracks & Traces』は、反実仮想ではなく音楽そのものから歴史的重要性を得た、出会いの記録として残る。

版の見取り図

2009年の拡張曲は末尾追加ではなく全体へ統合される

1997年原盤全9曲。『Vamos Companeros』で始まり『Trace』で終わり、Harmonia 76名義。
2009年再構成版『Welcome』と『Atmosphere』で始まり、『Aubade』で閉じる。Harmonia & Eno '76名義。
歌唱の範囲記録上、Enoの歌唱と歌詞は『Luneburg Heath』に限られる。

歴史上の1997年版の基礎は原盤9曲構成である。2009年版は12曲で、約10分長い。『Welcome』『Atmosphere』『Aubade』はRotherのテープ資料から選ばれた追加曲で、まとめて末尾に置かれず、1曲目、2曲目、12曲目に組み込まれている。

したがって原盤曲は、内部の順序を保ったまま2009年版では2つ後ろの位置へ移る。アーティスト表記もHarmonia 76からHarmonia & Eno '76へ変わる。『Luneburg Heath』には記録されたEnoの歌唱があり、全編器楽ではない。初版を理解するなら1997年の順序を、後の公認再構成を聴くなら2009年の順序を選ぶ。

試聴の順路

後の再構成版より先に1997年版を聴く

  1. まず9曲版の順で聴き、『Vamos Companeros』を唐突な入口として体験する。
  2. 『By the Riverside』で静けさという反対側の極を確かめる。
  3. 『Luneburg Heath』を限定された歌唱の例外として聴く。
  4. 『Sometimes in Autumn』でRotherの長いギターの軌道を追う。
  5. 『Weird Dream』の攪乱と『Almost』の旋律回帰を比べる。
  6. 最後の小品2曲を1997年版の意図された終結として聴く。
  7. 次に『Welcome』『Atmosphere』『Aubade』を2009年版の位置へ加え、全体の弧がどう変わるか確かめる。

調査資料

出典と参考資料

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