本文へ移動

クラシック・アルバムガイド

Phantasmagoria

Curved Air · 1972年 · プログレッシブ・ロック

ベーシストMike Wedgwoodが初参加したCurved Air作品。Darryl WayによるA面のヴァイオリン主導の作曲と、Francis Monkmanの電子音/アンサンブル実験を並べ、Sonja Kristinaの歌声が二つの世界を結びます。

1972年発売全9曲のオリジナルLP英国チャート最高20位
このアルバムをAmazonで見る →

アフィリエイトについて: このページのAmazonリンクから購入されると、追加費用なしでRetroForge Recordsに少額の紹介料が入る場合があります。

作品概要

基本情報

アーティスト
Curved Air
発売
1972
アルバム
スタジオ第3作
オリジナル収録曲
9曲
英国最高位
20位
制作
Curved Air、Colin Caldwell

重要である理由

Curved Air初期の頂点で出会う、二つの作曲世界

『Phantasmagoria』はCurved Airのスタジオ第3作であり、初期編成が持つ競合する強みを最も幅広く示した作品です。前半はDarryl Wayのヴァイオリン主導の曲が支配し、後半はFrancis Monkmanの電子音と大規模な編曲によって姿を変えます。

二つを知的に結ぶのがSonja Kristinaです。歴史的な語りと親密なフォーク唱法から、加工された音節やアンサンブルの演劇性へ移りながら、それぞれを別企画のようには聞かせません。

本作には本物の技術的実験があります。「Whose Shoulder Are You Looking Over Anyway」は通常の歌の背後に電子効果を置くのではなく、コンピューター解析とEMSシンセシスで加工したKristinaの声だけから一曲全体を組み立てます。

「Over and Above」は中核の5人にブラス、木琴、ヴィブラフォンを加えます。8分半の中心となるのは、反復するロックのリフレインではなく、管弦的構成、衝突、変化です。

本作は英国20位に達し、この落ち着かない音楽に目に見える社会的な広がりを与えました。また主要メンバーの離脱でバンドが変わる前、初期編成が残した最後のスタジオ声明となりました。

1972

新ベーシストと、分裂を深める工房

ベースと歌を担うMike Wedgwoodが、Sonja Kristina、Darryl Way、Francis Monkman、Florian Pilkington-Miksaに加わりました。彼の加入は最初の2作を引き継ぎつつ、ヴァイオリン、鍵盤、ギターで形づくられた個性を消しませんでした。

Curved AirはLondonのAdvision Studiosで録音。制作はバンドとColin Caldwellの共同名義で、Caldwellは録音技術も担当しました。

LPの作曲には内部の分化が表れます。WayとKristina Linwoodが歴史的、個人的でヴァイオリンを前面に出す序盤を形づくり、B面ではMonkmanの曲が電子音と大編成の領域を広げていきます。

WayとMonkmanの共作「Ultra-Vivaldi」はその境界にあります。バンドでおなじみのVivaldi素材を圧縮して変形し、協働を穏便な折衷ではなく不安定な力として響かせます。

題名はLewis Carrollの詩『Phantasmagoria』に由来しますが、9曲がその詩を物語るわけではありません。歴史、性、幻想、電子的知覚、幽霊が、一人の主人公を置かず共存します。

本作後、Way、Monkman、Pilkington-Miksaは現役編成を離れました。Curved Airは新たなメンバーで続いたため、『Phantasmagoria』は単なる3作目ではなく一つの終点でもあります。

バンドと客演

ヴァイオリン、電子音、歌声に広がるブラスの色彩

Sonja Kristinaリードヴォーカル、アコースティック・ギター
Darryl Wayヴァイオリン、ピアノ
Francis Monkmanギター、鍵盤、VCS3シンセサイザー
Mike Wedgwoodベース、ヴォーカル
Florian Pilkington-Miksaドラム
Frank Ricotti木琴、ヴィブラフォン
Crispian Steele-Perkins, Paul Cosh, Jim Watson and George Barnabyトランペット
Chris Payne, Alan Gout, David Purser and Steve Saundersトロンボーン
Curved Air、Colin Caldwell制作(Caldwellは録音技術も担当)

Kristinaは人物像を音楽上の変数として扱います。「Marie Antoinette」には公的な劇性、「Melinda」には近さが必要で、「Whose Shoulder」では通常の意味伝達を音声変形へ明け渡します。

Wayのヴァイオリンは歌い、切り込み、管弦楽的な推進力を模倣できます。「Cheetah」はその敏捷さを器楽曲へ凝縮し、冒頭曲は歴史劇の舞台を与えます。

Monkmanは身体的なギターと不安定な電子空間の対比を操ります。B面の流れは鍵盤の色づけを越え、テープ、シンセシス、楽器群の質量そのものによる作曲へ進みます。

Wedgwoodは、放っておけば飛散しそうな編曲に強固な低音の軸を与えます。彼の歌声もKristinaの中心的役割を奪わず、音色の幅を広げます。

Pilkington-Miksaはロックの脈動と同じ自然さで、作曲された中断を切り抜けます。「Over and Above」ではブラスと鍵盤の衝突を平板にせず、ドラムで秩序づけなければなりません。

Ricottiと8人のブラス奏者は、アルバム全体に薄く散らされた装飾的オーケストラではありません。終盤へ集中した参加が、そこに明確に異なる構造を与えます。

サウンドと構築

室内楽的ロックからコンピューター加工された発話へ

前半はクラシカル・ロックの劇性、アコースティックな室内楽歌曲、ヴァイオリン器楽曲の間を動きます。音は塊を埋めるのでなく、歌声、ヴァイオリン、鍵盤が応答し交差する線として作曲されています。

「Marie Antoinette」は強弱の対比で歴史の不安定さを舞台化します。続く「Melinda」は重みを取り去り、アコースティック・ギターと歌声に感情の細部を託します。

「Cheetah」と「Ultra-Vivaldi」は二種類の器楽的速度を示します。前者はヴァイオリン主導の運動を簡潔に展開し、後者は耳なじみのあるクラシック素材を加速させ、ほとんど滑稽なほど圧縮します。

表題曲が短い演劇的な仕切り直しを行った後、「Whose Shoulder」は通常の楽器編成を放棄します。加工された声がリズム、音色、切り離された人間の痕跡になります。

「Over and Above」は本作で最も大規模な構築物です。ロック・グループ、ブラス、有音程打楽器が、ジャズ、現代音楽、サイケデリックなスタジオ技法を想起させる区画を進みます。

「Once a Ghost, Always a Ghost」は、拡張された音色群に歌の形式を戻して締めくくります。本作はWayとMonkmanのどちらかを選ばず、二人の違いそのものに旅路を決めさせます。

全曲ガイド

九つの幻影、歴史、変容

01

Marie Antoinette

WayとKristina Linwoodは、宮廷の特権から革命と死へ進む歴史的人物像で幕を開けます。歌詞は題材を記録的な伝記ではなく劇として扱います。

ヴァイオリンが貴族的な華やぎと募る不安を与え、ギター、鍵盤、ドラムが壮麗な行列を脅威へ変えます。編曲が広がるにつれてKristinaの歌は観察から告発へ移ります。6分に及ぶ規模が歴史を劇として確立した後、アルバムは内面へ向かいます。

02

Melinda (More or Less)

Kristinaのアコースティックな歌は、公的な破局を壊れやすい私的な呼びかけへ置き換えます。Melindaは筋書きではなくイメージと記憶の中に留まり、その一部はつかめないままです。

まばらな伴奏によって息遣い、子音、旋律のためらいまで聞こえます。重要なのは対比です。Curved Airは楽器を加えるのと同じほど効果的に、楽器を減らして強度を生み出せます。

03

Not Quite the Same

WayとKristinaは思春期の性的な混乱を、機知と居心地の悪さで囲みます。壮大な恋愛ではなく、身体のぎこちなさを選ぶ曲です。

機敏な編曲が、題材を深刻な告白にも色物にもさせません。ヴァイオリンと鍵盤の合いの手は、気まずい内的独白へ割り込む声のように働きます。

04

Cheetah

Wayの器楽曲は速度と鋭敏さを簡潔なヴァイオリンの見せ場へ変えます。題名は文字どおりの場面を押しつけず、動きを示唆します。

リズム隊が引き締まった進路を保つ上で、ヴァイオリンの句が加速し、跳躍し、戻ってきます。LPにある通常の器楽曲2曲の一つですが、歌を中心とするアルバム全体の分類には使えません。

05

Ultra-Vivaldi

WayとMonkmanは、バンドとVivaldiの結びつきを狂騒的な小品へ圧縮します。なじみ深いバロックの運動が加速され、重ねられ、わずかに不安定になります。

この曲は敬意ある編曲ではなく変容として機能します。共同名義と境界に置かれた位置が、ヴァイオリン主導の前半とMonkmanの技術的な後半を結びます。

06

Phantasmagoria

Monkmanの表題曲はLewis Carrollを思わせる、遊び心ある超自然的な空気を引き出します。幻影は恐怖ではなく、言葉と音楽の移り変わりを通じて現れます。

短い形式が二つの器楽曲の後に歌声を戻し、続くさらに急進的な声の加工を準備します。その気まぐれな味わいによって、アルバム題名が全編へ一様な暗さを押しつけることもありません。

07

Whose Shoulder Are You Looking Over Anyway

録音されたKristinaの声はPDP-8/LコンピューターとSynthi 100によって解析、変形されます。発話の断片は通常の構文を失い、それ自体が曲全体になります。

反復する音素は、人間の声としての認識と電子的な抽象の間を漂います。それらをつなぎ留める通常のバンド演奏はありません。

題名は監視と自意識を音響的な状態へ変えます。声が、自ら解体される音を聞いているかのようです。

器楽曲と呼んでは核心を見失います。音源は人間の声だけです。

08

Over and Above

Monkmanによる8分半の中心曲は、5人編成をトランペット、トロンボーン、木琴、ヴィブラフォンで拡張します。ブラスは最後に重ねた装飾ではなく、構造そのものです。

拍子の変化、アンサンブルの噴出、静かな電子音や鍵盤の空間を通じて、各区画が衝突し再編されます。Kristinaはすでに楽器の個性で混み合う場へ入り、すべてを支配せずとも際立つよう演劇的なフレージングを用います。ジャズの色彩、現代音楽的な中断、ロックの重量が、一つのジャンル練習へ落ち着かず共存します。題名が約束する過剰さは設計によって実現され、規模そのものが一曲にどれだけの対比を抱えられるかを試します。

09

Once a Ghost, Always a Ghost

MonkmanとKristinaは解決ではなく回帰で締めくくります。幽霊は筋書きを完結させる登場人物というより、追い払えないものの像です。

歌声と拡張されたアンサンブルが実験的なB面を認識可能な歌へ戻しますが、ブラスと移ろうアクセントが表面を不安定なまま保ちます。終わりは人間の記憶を、2曲前で聞いた加工済みの痕跡へ結びます。こうして『Phantasmagoria』は幻影を説明するのでなく、用いてきた手法を集めて閉じます。

一つの物語ではない

示唆的な題名であって、一つの怪談ではない

『Phantasmagoria』は一続きの怪談ではありません。Marie Antoinette、Melinda、「Not Quite the Same」の語り手が、Carrollに由来する題名の世界の登場人物になるわけではありません。

より強い結びつきは変容です。王妃は歴史の犠牲者に、親密さは不確かな記憶に、Vivaldiは加速された素材に、発話は電子的な音色になります。

見ることと見られることが間接的に反復します。公的な歴史がMarie Antoinetteを裁き、個人的な欲望は自意識を帯び、「Whose Shoulder」では別の存在が知覚へ影を落とします。

幽霊が示すのは恐怖より持続です。表題曲は幻影を遊び心で扱い、終曲は回帰を一つの存在様式とし、コンピューター曲は言語が溶けた後にも人間の痕跡を残します。

分かれた作曲者像そのものが、結果として主題的に働きます。Wayの身体を帯びたヴァイオリンとMonkmanの媒介された電子音は、過去が現代の音へどう再出現できるかについて異なる答えを示します。

John Gorhamのイメージ

不安定な形式のアルバムに与えられたシュールな劇場

イラストはJohn Gorham、写真はPeter Howe、アートディレクションはRichard Rockwoodが担当しました。パッケージは一続きの歌詞を絵解きせず、演劇的な題名へシュールな視覚空間を与えます。

規模と媒体を繰り返し変えるアルバムにふさわしいデザインです。人の存在、演出された像、グラフィックの構築が同じ空間を共有し、どれも完全には安定しません。

音楽との関係は物語ではなく雰囲気にあります。Marie Antoinetteの歴史やMelindaの親密さを、スリーヴの場面に隠された挿話として読むべきではありません。

イラスト、写真、ディレクションに分かれたクレジットは、本作の複合的な方法と呼応します。異なる技法が一つの物の中で意図的に見える形にされています。

英国チャートへの帰還

英国アルバム・チャートに5週間

『Phantasmagoria』は1972年5月13日に英国アルバム・チャートへ入り、最高20位、計5週間ランクインしました。最も実験的な曲を通常のシングルへ変えることなく、英国カタログの確かな一作となった実績です。批評では歌としての「Marie Antoinette」と「Melinda」、スタジオでの野心を示す「Whose Shoulder」と「Over and Above」がしばしば注目されます。多様性ゆえに評価は分かれます。Wayの旋律的なヴァイオリン曲に惹かれる聴き手にはMonkman側が流れを乱すように聞こえ、実験的ロックを好む聴き手には、その混乱こそ到達点と聞こえるでしょう。

チャートでの足跡が重要なのは、このせめぎ合いを1972年の主流アルバム文化の内側に位置づけるからです。Curved Airの冒険性は、現実の聴衆から孤立してはいませんでした。

分裂の前

初期時代を締めくくる冒険的声明

本作はCurved Air初期の頂点の一つであり、創設期の器楽的パートナーシップが崩れる前の最後のスタジオ作と広くみなされています。「Marie Antoinette」はバンドを代表する劇的な曲として残り、「Melinda」はKristinaの静かな求心力を保存します。「Whose Shoulder」は、中心的歌手、コンピューター解析、大型シンセシスが出会った英国ロック初期の事例として今も重要です。

「Over and Above」は、プログレッシブな規模が必ずしも片面を占める組曲や交響曲的な滑らかさを意味しないと示します。その形式は中断と、鋭く対照するアンサンブルに支えられています。

『Phantasmagoria』の遺産は、Curved Airを標準化することへの拒否です。編成内の緊張が、明らかにつながりながら創造的に異なる二つの半面を持つアルバムを生みました。

どの版を選ぶ?

二つの面のせめぎ合いを保つ

オリジナル9曲LP「Marie Antoinette」から「Once a Ghost, Always a Ghost」までの本来の曲順。
標準配信版約37分の中核構成と、両面の対比を保っています。
2018年拡張2枚組版Esotericのカタログで、リマスター盤と関連アーカイブ音源を組み合わせた版。

まずオリジナル9曲を聴いてください。Wayのヴァイオリン中心の曲からMonkmanのスタジオ実験へ移る動きは面の切り替わりに依存しており、その区切りが聞こえる形で保つべきです。

「Melinda」で歌声の自然さとアコースティックな細部を確かめます。「Cheetah」はヴァイオリンのアタックを、「Whose Shoulder」は加工された声が耳障りなノイズにならず質感を保つかを試します。

「Over and Above」にはブラス、有音程打楽器、鍵盤、リズム隊を聞き分けられる十分な分離が必要です。混雑したマスターでは曲内部の対話が隠れてしまいます。

2018年Esoteric版はリマスター盤とアーカイブの文脈を求める聴き手に有用ですが、第1ディスクにあるオリジナルの終点は依然として決定的です。

「Cheetah」と「Ultra-Vivaldi」は器楽曲、「Whose Shoulder」は声を素材にした電子作品として扱ってください。アルバム全体は器楽作品という分類にも、一つの狭いジャンル名にも収まりません。

聴き進め方

段階を追って様式の境界を越える

  1. 最初の一巡: 全9曲のLPを順に聴き、「Ultra-Vivaldi」後の転換をそのまま保ちます。
  2. Kristinaを追う: 歴史劇、アコースティックな親密さ、音声の抽象化、幽霊のような回帰を比べます。
  3. Wayを追う: 物語の色彩から純粋な運動、加速するVivaldiまでヴァイオリンをたどります。
  4. Monkmanを追う: 表題曲の気まぐれさがコンピューターの声、ブラスの建築、回帰へ広がる過程を聴きます。
  5. 蝶番へ戻る: 「Ultra-Vivaldi」で、協働と分化が同じ1分間を占める様子を聴きます。

調査資料

出典と参考資料

さらに探る

RetroForge知識グラフをたどる

人物、レコード、出来事、思想を結び、このテーマの音楽的背景を深める厳選ルートです。

ジャンルとシーン